退職して収入が無いのに、なぜ住民税の請求が来るのか
答えはひとつです。住民税は「いまの収入」ではなく「前年の所得」にかかる税だからです。 この一点さえ押さえれば、退職後に届く請求の正体はすべて説明がつきます。
出典確認日 2026-08-12
根拠は地方税法第313条
個人住民税の所得割について、地方税法はこう定めています。
所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び 山林所得金額とする。
地方税法 第313条第1項(所得割の課税標準)/e-Gov法令検索(2026-08-12 取得)
「前年の所得について算定した」——ここがすべてです。 いま届いている住民税は、いまの収入に対するものではなく、去年働いて得た所得に対するものです。 だから退職して収入がゼロになっても、前年に所得があるかぎり請求は届きます。
総務省の解説も同じことを書いています。 「所得割の税率は、所得に対して10%(道府県民税が4%、市町村民税が6%)とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます」。
「いつ時点の住所」で決まるのか — 賦課期日は1月1日
個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
地方税法 第318条(個人の市町村民税の賦課期日)/e-Gov法令検索(2026-08-12 取得)
総務省の説明では「個人住民税は、その年の1月1日時点で市町村(都道府県)に 住所がある方に対して課税されます」となります。 つまり年の途中で引っ越しても、その年度分は1月1日に住んでいた市区町村に納めます。 引っ越し先に納めるのは次の年度からです。
1年ずれるから、請求は「あとから」来る
前年の所得に対して課税し、それを翌年に徴収する。この1年のずれが、 退職後に住民税が追いかけてくる理由です。時間軸で並べると、こうなります。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1年目 1月〜12月 | 働いて所得を得る(この年の所得が課税の対象になる) |
| 2年目 1月1日 | 賦課期日。この日の住所地の市区町村が課税する |
| 2年目 6月〜3年目 5月 | 1年目の所得に対する住民税を、12回に分けて毎月の給与から天引き(特別徴収)。 会社は徴収した月の翌月10日までに市区町村へ納入する |
この「2年目6月〜3年目5月」の途中で会社を辞めると、残りの回数分をどうするかが 問題になります。それを決めているのが地方税法第321条の5第2項で、退職した月によって扱いが変わります。
だから、退職後は「2回」意識する必要がある
退職時に処理されるのは、あくまでそのとき徴収中だった年度分の残りです。 それとは別に、退職した年に得た所得に対する住民税が、 その翌年の6月ごろに新しい納税通知書として届きます。 このときにはもう会社を辞めているので給与天引きができず、 納付書で自分で納めることになります。
ここが最大の落とし穴です。退職時にまとめて引かれたことで「住民税は払い終わった」と受け取ってしまい、 翌年6月に届く通知書で驚く、という順序で起きます。 瑞浪市の案内も、退職時に引かれた分は前々年の所得に対するもの、 6月に届いた通知書は前年の所得に対するもので、 二重に課税されたわけではない、と説明しています。
出典
- 地方税法 第313条・第318条・第321条の5(e-Gov法令検索/2026-08-12 取得)
- 総務省 地方税制度「個人住民税」(soumu.go.jp/2026-08-12 取得)